京都下鴨病院で整形外科の理学療法士をしている小野志操のブログです。
肩関節・肘関節・手関節・股関節・膝関節・足関節・腰背部の術後療法や保存療法、スポーツ障害に対するリハビリテーションを行なっています。
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第3回下鴨整形外科疾患フォーラム(2013/7/20)~ 椎間孔外狭窄症について


第3回下鴨整形外科疾患フォーラムに参加しました。

和歌山県立医科大学の南出晃人先生が「腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎内視鏡手術-特に椎間孔部狭窄の診断と進歩-」と題してご講演下さいました。

椎間孔狭窄はputtiやMitchellによって仙椎化における腰椎L5 神経障害を起こす病態として報告されています。

Putti V. New conceptions in the pathogenesis of sciatic pain. Lancet 1927; 2: 53-60.
Mitchell CL. Lumbosacral facetectomy for relief of sciatic pain. J Bone Joint Surg 1934; 16: 706-8.

その後、1954年Verbiest により腰部脊柱管狭窄症の概念が導入され、椎間孔狭窄の概念は1976年Arnoldiらが腰部脊柱管狭窄症国際分類の中で外側型狭窄の範疇の一つとして記載しています。

Arnoldi CC, et al. Lumbar spinal stenosis and root entrapment syndromes. Definition and classification. Clin Orthop 1976; 115: 4-5.

頻度は腰椎変性疾患の中で8 -11%と報告されていて、まれな病態ではありません。

Kunogi J, Hasue M. Diagnosis and operative treatment of intraforaminal and extraforaminal
nerve root decompression. Spine 1991; 16: 1312-20.
Porter R, Hibbert C, Evans C. The natural history of root entrapment syndrome. Spine 1984; 9:
418-21.

Macnabらが「Hidden zone」 と紹介しているように、この部の病態は見落とされやすく、Failed back surgery syndrome の約60%を占めるとも言われています。

MacNab I. Negative disc exploration: An analysis of the causes of nerve root involvement in sixtyeight patients. J Bone Joint Surg 1971; 53: 891-903.
Burton R, Kirkaldy-Willis W, Yong-Hing K,Heithoff K. Causes of failure of surgery on the
lumbar spine. Clin Orthop 1981; 157: 191-7.

 椎間孔外側狭窄症の診断には3D-MRIやDTI(拡散テルソン画像)が有用とのことです。

Kitamura, Mitsuhiro , Eguchi, Yawara , et al.  A Case of Symptomatic Extra-Foraminal Lumbosacral Stenosis (“Far-out Syndrome”) Diagnosed by Diffusion Tensor Imaging
Spine: 15 June 2012 -
Volume 37 - Issue 14

特徴的な所見(診断基準)としては、

①神経根・脊髄神経の横走化(上記論文のFig.2)
②後根神経節の不明瞭化
③椎間孔内ヘルニア
④神経根・脊髄神経の浮腫(上記論文のFig.2)

の4点が挙げられます。

椎間孔外狭窄は脊柱管より遠位にある場合が多く、15~20%は椎間孔外側のみに狭窄があります。

治療としては関節鏡視下に仙腸靭帯(腸腰靭帯)を切除して、第5腰神経を除圧することで症状が改善します。

今回のフォーラムで学んだことを臨床の理学療法に活かしていきたいと思います。

成長期の骨盤裂離骨折

下前腸骨棘の骨端裂離骨折
下前腸骨棘の裂離骨折(Avulsion fractures of the anterior inferior iliac spine)は急激な筋収縮により発生するとされています。

骨盤裂離骨折の好発年齢は10代から20代前半です。

今回、私が診させて頂いた患者さんも10代のサッカーをしている少年でした。

日常生活やインサイドキックでは痛みがありませんが、トーキックでボールにインパクトした瞬間に股関節前面に痛みが出るとのことでした。

下前腸骨棘に圧痛があり、Ely's test の肢位で膝伸展方向に等尺性収縮を行なってもらうことで痛みが再現出来ました。

文献的には、ほとんどが安静と保存療法で症状が軽快すると報告されています。

Metzmaker JN, Pappas AM. Avulsion fractures of the pelvis. Am J Sports Med. 1985; 13(5):349-358.

Rossi F, Dragoni S. Acute avulsion fractures of the pelvis in adolescent competitive athletes: prevalence, location and sports distribution of 203 cases collected. Skeletal Radiol. 2001; 30(3):127-131.

運動療法としては下前腸骨棘に付着している大腿直筋の起始部に負担がかからないように徒手的にブロックをしたうえで、ストレッチングやリラクゼーションを行います。

小児の骨盤裂離骨折に決定的な分類はありません。

TorodeとZiegの分類:Torode I, Zieg D. Pelvic fractures in children. J Pediatr Orthop. 1985; 5(1):76-84.

Type I: 裂離骨折
Type II: 腸骨翼骨折
Type III:単純な骨盤弓骨折
Type IV: 骨盤弓の破裂骨折

Bart I. McKinneyとCory NelsonはMartin と Pipkin の坐骨結節の裂離骨折の分類(Martin TA, Pipkin G. Treatment of avulsion of the ischial tuberosity. Clin Orthop Relat Res. 1957; (10):108-18.)を参考に骨端裂離骨折の分類を提唱しています。

Type I: 転位のない骨折
Type II: 2cmまでの転位があるもの
Type III: 2cm以上の転位があるもの
Type IV: 症候性の骨折もしくは有痛性の骨軟骨腫

Bart I. McKinney, Cory Nelson, Wesley Carrion Apophyseal Avulsion Fractures of the Hip and Pelvis. Orthopedics January 2009;32 ·Issue 1 (http://www.healio.com/orthopedics/hip/journals/ortho/%7B49c02035-72df-43aa-868b-be25e911ba6c%7D/apophyseal-avulsion-fractures-of-the-hip-and-pelvis

成長期に見られる骨端線離開や裂離骨折は他にも多くありますが、また別の機会に書きたいと思います。

整形外科リハビリテーション学会主催 第14回宿泊技術研修会 @三重県湯の山(2013/7/6-7)


7月6日、7日の2日間、毎年恒例の整形外科リハビリテーション学会主催 宿泊技術研修会に実技講師として参加してきました。100名近い理学療法士が全国から集まり、当院からは齊藤太介先生も参加しました。

1日目の午前中は股関節周囲筋の解剖と触診、足関節を構成する骨と靭帯の解剖と触診を行いました。午後からの前半は私の養成校時代の同期である平針かとう整形外科の岡西尚人先生が腰椎の機能改善についての講義と治療実技を、後半は恩師である中部学院大学教授の林典雄先生が肩、腰、膝の解剖からみる拘縮治療技術の講義が行われました。

私が特に興味を持ったのは腸腰靭帯の解剖と機能です。

腸腰靭帯の模式図
腸腰靭帯には第5腰椎横突起尖端から腸骨稜に付く下方線維束と第5腰椎横突起基部から仙骨前面に付く仙骨線維束からなる深層部と第4腰椎横突起尖端から腸骨稜に付く浅層部からなります。

腸腰靭帯の機能は一般に第4腰椎と第5腰椎の側方安定性に寄与するとされていますが、腸骨の前後傾の制動にも関与しています。腸腰靭帯の拘縮はヘルニアや辷り症の好発部位である第4、5腰椎の椎間と第5腰椎と第1仙椎の椎間の機能を低下させます。

今回の技術講習会ではその拘縮の評価と治療を学ぶことが出来ました。

2日目の午前中は碧南市民病院の浅野昭裕先生が靭帯の機能と治癒過程についてと実際のRadio Carpal Joint、距腿関節、肩鎖関節に付く靭帯の解剖と機能、その治療技術について、午後からは松阪中央総合病院の熊谷匤晃先生が股関節周囲の評価と治療について講義が行われました。熊谷先生の講義の中で引用されていた、養成校時代同期のさとう整形外科の赤羽根良和先生の「Solheim testおよび外旋強制テストにより誘発される疼痛部位と伸張組織の検討」では股関節屈曲位での梨状筋の伸張方向について検討されていました。梨状筋は股関節の外旋筋ですが、股関節90°屈曲位では内旋に作用する可能性があります。臨床症状と整形外科テストの症状再現からその可能性について報告しているものです。私自身も臨床でそのことについては感じていましたが、赤羽根先生の検討方法を学ぶことが出来ました。今回の検討方法を参考に臨床で感じていることを私も報告していけたらと思います。

1日目の講義終了後には懇親会が行われ、夜遅くまで理学療法について語り合う、熱い時間を持つことが出来ました。私はいつもの通り師匠である整形外科医の加藤明先生に厳しくも温かくご指導頂き、これからの私自身の進むべき方向性について考えることが出来ました。

今回の講習会を通して学び感じたことを臨床での治療に活かし少しでも患者さんが良くなるよう努力を続けていきたいと思います。